【事件】Unstoppable Domainsのサブドメイン廃止と「NFT所有権」の崩壊
「一度買ったら更新料無料で、永久に自分の所有物として自由に使える」
そんな甘美なディセントラライズド(非中央集権)の思想を掲げ、世界中から巨額の資金を集めたWeb3ドメインのパイオニア「Unstoppable Domains(UD)」。しかし現在、彼らが断行した一方的な仕様変更(機能の廃止・制限)により、初期からの支持者たちの間で「だまし討ちだ」「詐欺だ」と激しい怒りの声が渦巻いている。
一体、Web3の裏側で何が起きているのか。その利権構造と、私たちが信じ込まされてきた「NFT神話」の嘘を暴く。
突如として奪われた「サブドメイン発行機能」
かつてUDのドメインホルダーは、自身のマイページやスマートコントラクトを介して、自由に、かつ無料(ガス代のみ)でサブドメインをミント(NFT化)することができた。これにより、自分専用のウォレットの整理や、ビジネスとしてのブランド展開を自由に設計できるはずだった。
しかし、UD側は「Web3サブドメインのミント機能」をユーザーに何の大々的な事前アナウンスもないまま、事実上終了・無効化した。現在、個人ユーザーが所有するドメインから、自由にNFTサブドメインを量産・管理する機能は完全に止められている。
初期ホルダーを切り捨て、Web2の利権へ「魂を売った」運営
なぜ、ユーザーの資産とも言える機能を勝手に廃止できたのか。理由は、運営会社が「Web3の自由」よりも「Web2の巨大な利権」を優先したためである。
ICANN(Web2の元締め)への媚び売り
UDは現在、通常のブラウザでも自社ドメイン(.crypto など)を使えるようにするため、インターネットの元締めであるICANN(アイキャン)の新トップレベルドメイン(gTLD)募集ラウンドへの正式登録に必死になっている。
「自由な量産システム」が審査の足枷に
ICANNは商標権侵害やフィッシング詐欺に極めて厳格である。ユーザーが審査なしで、裏で自由に無制限にサブドメインを量産できるシステムのままだと、審査に確実にハネられてしまう。
ビジネスモデルの迷走
Web3ドメインの売れ行きが鈍化した結果、現在のUDは特定のパートナー企業へのブランド売りや、普通の .com ドメインを格安で売る「普通のWeb2ドメイン業者」へのシフトを急いでいる。そのために、初期にリスクを取って支えてくれた個人ホルダーの権利をあっさりと切り捨てたのだ。
暴かれた「NFT=絶対的な所有権」という嘘
この事件がWeb3業界に与えた最大の衝撃は、「Unstoppable(止められない)」と謳うシステムを止めたのが、他ならぬ運営自身だったという壮大な皮肉である。
私たちが信じ込まされていた「NFTの所有権」には、致命的な罠が隠されていた。
【リゾルバー(解決システム)の罠】
たしかに、スマートコントラクトを直接叩く(直コン)などの力技を使えば、現在でもPolygonなどのブロックチェーン上に無理やりサブドメインのNFTを生成することは、理論上可能かもしれない。
しかし、ドメインを文字通りドメインとして機能させる「解決システム(リゾルバー)」やAPIの管理権は、UDという一民間企業がガチガチに握っている。運営が「そのサブドメインは認めない」とシステム側で弾いてしまえば、ウォレットアプリに打ち込んでもアドレス変換されず、送金にも使えない。ブロックチェーンに刻まれているだけの「ただの動かないデジタルゴミ」に変えられてしまうのである。
結局のところ、中央集権的なプラットフォームに支配されない世界を目指したはずのユーザーが、「Unstoppable Domainsというプラットフォーム」に完全に支配されていたという、最悪のオチがついたわけだ。
Web3の理想をマーケティングの道具として使い、資金を集めた後はWeb2のルールに平然と魂を売る。この一件は、現在のWeb3プロジェクトが抱える中央集権性のリスクと、ユーザーの権利の脆弱さをこれ以上ない形で証明してしまった。