【歴史の分岐点】グローバリズムの終焉と「インターネットの分断(スプリットネット)」

UDによるWeb3ドメインの暴走や、Web2ドメインの理不尽な値上げラッシュ。これらは単なる一企業の不祥事や、一業界の強欲さを示すエピソードではない。

私たちが当たり前のように享受してきた「世界中どこからでも、同じURLを叩けば同じサイトに繋がる」という、大いなるインターネットインフラそのものが内部から腐り、終わりを迎えつつあるという歴史的な警告(終わりの始まり)なのである。

協調的な「一瞬の時代」が生んだ技術的あだ花

私たちが慣れ親しんできた「オープンで、ボーダーレスなグローバル・インターネット」は、人類の普遍的な到達点などではない。それは冷戦が終結し、「これからは民主主義と自由市場経済、速度、そしてグローバリズムが世界を1つにする」と盲信されていた1990年代〜2000年代初頭という、歴史上奇跡的に平和だった一瞬のボーナス(特異点)が生み出した、特殊な技術的あだ花に過ぎなかった可能性が極めて高い。

インターネットの管理団体である「ICANN」がアメリカで設立されたのも、まさにグローバリズム全盛期の1998年である。国境という概念を無視して地球全体を1つのネットワークで結ぶという理想主義は、当時の国際政治のトレンドがあったからこそ許容されていたインフラに過ぎないのだ。

国連の機能不全と「地政学の復活」

しかし現在、世界は「グローバリズム」から、国家の主権やブロック経済を重視する「多極化・ナショナリズムの時代」へと完全に逆戻りしている。

かつて「人類共通の遺産」として機能していたインターネットの統治(ガバナンス)を巡り、国際社会では激しい利害の対立と主導権争いが勃発している。

アメリカ(西側)の思惑

「民間企業や技術者コミュニティを中心に運営すべき」と主張するが、その本音はVerisignやGoogle、ICANNといった自国の巨大テック企業が利権とルールを独占し続けられるからに他ならない。

中国・ロシア(東側)の思惑

「インターネットは国連の国際電気通信連合(ITU)などの『政府間組織』が管理すべきだ」と主張し、国家の力でネットの住所(ドメイン)や通信を完全に検閲・コントロール下に置こうとしている。

この対立を調停すべき国連(UN)という組織自体が、第二次世界大戦の「戦勝国利権(常任理事国の拒否権)」を引きずったまま、大国間の地政学対立によって完全に機能不全(死にかけている状態)に陥っている。実効性のある国際的な規制やルール統合など、もはや望むべくもない無法地帯と化しているのだ。

ローマ帝国の崩壊と「スプリットネット現象」

一度築き上げられた巨大なインフラが崩壊していく過程は、かつてのローマ帝国の崩壊と実に見事に重なり合う。

高度な道路網や水道システムを誇ったローマ帝国も、中央政府が機能不全に陥り、内部の腐敗と地方軍閥の台頭によって崩壊した後は、維持コストを支払えなくなり寸断された。その後、ヨーロッパは地域ごとに孤立した「中世の暗黒時代」へと逆戻りした。

現代のインターネットもまた、物理的な光ファイバーは残るかもしれないが、住所録(ルートサーバー)がバラバラに分裂する「スプリットネット(インターネットの分断)」という最悪の結末へ向かっている。

【分断される3つの陣営】

  • 西側の利権ネット: 独占企業が好き勝手に値上げを繰り返し、ユーザーから金を貪り続ける空間。
  • 東側の国家管理ネット: 中国やロシアなどが独自に構築し、情報の検閲と遮断が常態化する空間。
  • 分散型の引きこもりネット: 既存のどちらの運営・国家にも絶望したユーザーや開発者が、完全分散型の仕組み(ENSなど)に逃げ込む空間。

世界中が自国第一主義や陣営の分断に舵を切る中、ドメイン会社が目先の利益のためにユーザーの信頼を切り売りしている姿は、まさに帝国の末期症状そのものである。地球規模の「単一のインターネット」という夢が崩壊しつつあるこの分水嶺において、私たちは今、生き残りのための「個人の防衛策」を真剣に考えなければならない段階に来ている。

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